戦争の真実を伝えていくには

 子供の頃のことですが、少年サンデーや少年マガジンなどの少年向けの漫画週刊誌や月刊誌には戦記物がいつも特集され、ゼロ戦や隼などの戦闘機、戦艦大和などの戦艦などの性能などが説明され、その活躍ぶりを載せていました。これを見て、私たちはカッコいいと言い読みふけっていました。
 でも、私にとって恐怖の特集が組まれました。それは、ガナルカナル島の玉砕の記事です。それまで、私たちはさまざまな兵器がいかに強力であるかを問題にし、「ゼロ戦レッド」や「紫電改の鷹」などの漫画で男の友情に憧れていたのです。しかし、この特集は戦争の悲惨な現実が書かれていました。食べ物が無く草を食べ泥水をすする。アメリカ軍の猛攻で死んでゆく兵士達・・・・戦争は命を奪ってしまう、そのことに気がつき始めました。
 修学旅行で行った長崎で原爆の恐ろしさを知り、担任の先生の戦争体験を聞き、両親や祖父の話を聞き戦争の恐ろしさを知っていきました。
 中学時代には予科練で戦闘機に乗る訓練を受けていたという先生がおられました。スリッパで叩かれ、海軍精神注入棒という棒で殴られる・・・そんな毎日だったといいます。もう少し戦争が長引けば特別攻撃隊員として飛び立っただろうということでした。
 私たちの時代は親、教師など周りの大人たちが戦争体験者で、苦しい思いをしていたんです。肉親が死んだなどの話はよく聞いたことです。
 

 今、私の周りにも戦争体験者が少なくなってきました。このことは仕方がないことです。でも、日本が中国に侵略することから始まる、あの戦争がどんなもんであったかを庶民目線で残すことは重要だと思います。
 そして、あの戦争に反対した人々がどうなったかも考えていかなければならないと思います。麻生副総理・外務大臣のおじいさんである吉田茂は、外交力の無さを嘆く発言で獄につながれ、平和を説く宗教者は迫害・投獄され、戦争に反対した社会活動家たちは特別高等警察に拷問を受けました。『蟹工船』を書いた小林多喜二は特別高等警察の拷問によって殺され、遺体はゴミ箱に放置されたといいます。
 戦争は常に言論への圧力から始まるようです。

 『はだしのゲン』が、松江市内の学校などで公開されなくなったという報道に驚きました。マスコミなどでも大きく取り上げられ、手続きの間違いを理由に、元に戻されたと聞きホッとしました。
 「残酷」とか「子供に見せたくない性的表現がある」という投書を理由にした措置だったということです。手続き云々は・・・・言い訳かね?
 戦争は残酷なものです。体験者は、どう表現しても表現しつくせない。そんな中で『はだしのゲン』は、子供たちに多くのことを学ばせてくれたようです。残酷さや戦場での道徳の崩壊などの真実を知らせることこそ大切です。
 あの戦争の苦しみは、加害者とさせられたり被害者となったりした庶民が語りつがなければならないと思います。もう、二度と『はだしのゲン』などが、悲惨さや残酷さなどを理由に子供たちの目に留まらなくされないように見守りましょう。残酷なものは残酷だといい続けたいと思います。
 

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